東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)27号 判決
一、本件第一次審決に対する原告の不服申立が再審の請求であつたか否かの点を除く、原告の一及び二の主張事実は当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一号証によれば右第一次審決の審決書の謄本が原告に送達せられたのは昭和三六年一〇月一二日であつたことが認められる。
二、そこでまず右第一次審決に対する原告の不服申立が再審の請求であつたか、抗告審判の請求であつたかについて判断する。
本件口頭弁論の全趣旨からすれば、原告の右不服の申立は、成立に争いのない甲第三号証によつてせられたことが認められ、右甲第三号証によれば、右不服の申立は、昭和三六年一一月一〇日附抗告審判請求書なる題名の書面によつてせられており、その末尾には、なるほど原告の主張するように「再審決を求める」旨が記載せられてはいるが、その冒頭部分では「昭和三二年審判第六三九号登録第三八一、一一五号実用新案の権利範囲確認審判事件について、昭和三六年一〇月三日なされた審決は、本件審判請求が不適法であるとの理由で却下されたが、請求人はその理由を不服としこのたび抗告審判の請求に及んだ次第である」と記載し、「再審」請求をする趣旨の記載は全然せられていないだけでなく、その不服の理由として記載せられたところも、第一次審決に再審事由が存する旨の記載は何らせられておらず、原告が本訴において主張する「審決に影響を及ぼすべき重要なる事項につき判断を遺脱したもの」との点も、右不服申立書にかような表現をもつてする不服理由の開示のないのは勿論、これに該当するような事実の開示もせられておらず、ただ第一次審決を不当とする理由を記載しただけにすぎないことが認められる。
再審請求は実用新案法第四二条第二項によつて準用せられている民事訴訟法第四二〇条第一項第一号ないし第一〇号所定の特別の要件のある場合に限つてその請求が許されるものである。従つてもし第一次審決に対する不服申立がこの再審請求であるというのであれば、その不服申立書の題名はこれを暫くおくとしても、少くともその不服理由の中では、この再審事由に該当する事実の主張がせられる筈である。然るに本件不服申立書においては、前記の通りにこの主張の記載もなく、しかもその題名は抗告審判の請求書とせられ、その冒頭部分の記載においても同様抗告審判を請求する旨が記載せられているのである。右のような原告の本件不服申立を原審決(第二次審決)が原告主張のような再審の請求と見ずして、これを題名通りの抗告審判の請求と見たのは洵に已むを得ないところというべきであり、これを原告主張のような理由で却下したのもまたこれを相当とするの外はない。
(不服申立書の末尾にある「再審決を求める」との記載も、ただ再度の審決を求める意味と解するの外はないであろう。)
三、原告は現行実用新案法の制度下では新たな抗告審判の請求はできないのであるから、原告の本件不服申立はこれを再審の請求と見るのが理の当然であると主張するが、如何に右原告主張通りの現行制度下でも、これを再審請求と見るべき何等のよすがもないこと前記のような本件不服申立を、再審請求と見よということ自体難きを求めるものというべきであろう。そしてまた、不適法な抗告審判の請求とはいえ、明らかにその請求と認められる請求のあつた以上は、特許庁としてこれを受理の上審判番号を附してこれに相当の審決を与えることには何等の違法もないというべきであり、本件のような不適法な審判の請求であつて、その補正をすることができないものにあつては、何等の補正命令をも出すことなくして却下の審決をすることは、実用新案法第四一条、特許法第一三五条の趣旨に鑑み、また理の当然とするところである。(本件不服の申立は、これを不適法と見るの外はない抗告審判請求の方法によつてせられたものであり、その不服申立書の題名を再審請求書と変えることは,その請求自体を全然違つた請求に変更するものであつて、単なる法式違背の補正とは全くその性質が違うものであるから、これを原告主張のように補正命令によつて補正を命ずべき場合ということはできない。)
四、原告はまた第一次審決の取消を求めるが、右第一次審決に対する取消の訴は実用新案法施行法第二一条、旧実用新案法第二六条旧特許法第一二八条の二第二、三項により、右第一次審決の送達のあつた日から三〇日の不変期間内にこれを提起することを要するものであり、右第一次審決の送達せられたのは前記の通り昭和三六年一〇月一二日であるのに、原告が本訴で、右第一次審決の取消をも求める旨の準備書面を当裁判所に提出し、その出訴をしたのは昭和三七年九月六日であること本件記録上明らかであるから、右原告の第一次審決取消の訴は出訴期間を徒過した不適法な訴である。
五、以上の通りであるから、第一次審決の取消を求める原告の本訴はこれを却下し、第二次審決の取消を求める原告の本訴請求はこれを棄却することとする。